風になびく




富士の煙の




空に消えて






行方も知らぬ






わが思いかな






この、一見さりげない句、実は西行の句です。しかも西行自身がこの歌を自ら詠んだ歌のNO1(自賛歌)に上げてるのです。






白洲正子氏は「この明澄でなだらかなしらべこそ 西行が一生をかけて 到着せんとした境地であり、ここにおいて自然と人生は完全な調和を形づくる」と解説されておられます。






私は五行歌を、従来の歌でも詩でもないと考えています。生活・心情のコアなものを取り出して濃縮して表現するため一応五行という目安があるだけで、自由で制約がないもと思いながら作っています。






しかし、西行の自賛歌であるこの句にはやはり衝撃を受けました。形式を超える心の自由さと、自らの魂を鎮める自然の姿を切り取った言葉に、やはり歌の理想の姿を見ます。