再起する脳 脳梗塞が改善した日 作者: 渡辺 一正
- 作者: 渡辺 一正
- 出版社/メーカー: 幻冬舎ルネッサンス
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本
- それでは我ら同病を代表して渡辺一正氏「再起する脳」をご紹介します。
- 既にこの本を手に取られた方も多いと思いますが、同病者にとりまして簡便にベーシックな知識を手に入れるのに有用な本だと思います。
- 参考文献からも明らかなように偏らない幅広い知識を習得されており、わたしもずいぶん勉強させていただきました。初版は2010年5月、ちょうど私が倒れた月です。
- 今では当たり前のことも、この本が書かれた時は、今の様にインターネット上の知識の蓄積も少なく、簡便に多くの知識を獲得できる時代ではなっかたと思います。私も”片麻痺 痛み”などと検索しても殆どヒットせず困惑したのを覚えてます。コツコツ本を読まれてた渡辺さんの努力に本当に頭が下がります。
- それでは、渡辺さんに最大限の敬意を払いつつ。私の読書ノートから内容をご紹介いたします。
- ★脳はダメージを受けた細胞が使えないので回路の選択肢が減って直線的なつながり方になってしまい感情表現がストレートになる。怒りっぽく涙もろく思考回路が単線になるのは、すべて後遺症の一種だ。
- ★垂直軸認知障害
- 垂直と感じる軸が左右どちらかに傾いてしまって(マヒ側)この傾いた軸に体を合わせようとため転倒してしまう。
- ★自己流に歩く
- 自己流に歩く訓練ばかりやっていると伸筋系ばかり強くなって屈筋系の回復が邪魔され足が突っ張て膝が曲がらなくなるということが起こる。足を前にだそうにも膝が曲がらず棒のような足のままで腰をひねって足を前に出すという非常にこわばった歩き方になる。
- ☆他力本願でなく自分のことは自分で考えて実践しなければ、長続きしない。
- 渡辺さんのこの本には、バイブルとされていた『松村和子先生の「動きづくりのリハビリテーションマニュアル』からも多く引用されています。私のお勧め本にも松村先生のこの本の内容を記していますのでよかったら併せて読んでみてください。
ロボットリハビリの罠
ロボットリハビリの罠
コーチングする人の、初歩的な罠は、フォームなどをいじりすぎることです。そして、教えすぎる。その結果教えられる方は混乱し、もう無茶苦茶にフォームを崩してしまう。プロ野球などでもよく聞く話です。そして、それはロボットリハビリでも端的にでます。
ロボットでは各種調整が非常に楽です。歩行速度(足下のトレッドミル)、足を振り出す力、膝折れ防止の強度、膝曲げの角度などモニターで瞬時に切り替えられます。セラピストは少し歩行で何かを感じると頻繁にこれを行います。
それに対して片マヒ障害者は運動神経に障害を抱えていますので、迅速な対応ができないのです。ロボットは迅速、私(片マヒ障害者)運動音痴で対応に時間がかかる。PTがすぐ助言する。ますます混乱する。これがPT二人で相談しながらやるとさらにひどいものです。ひとりが設定を頻繁に変え、もう一人が姿勢を強引に変える。私はこれで転倒しそうになりました。
「もっとシンプルにやってほしい!」「設定を変えすぎないで!教えることをもっと絞って!」と転倒寸前になり頭に来た私は、強く要望しました。
それで、設定変更は頻繁に行わず、私の了解の上で行うことになりました。これで、徐々にロボットとの一体感が生まれ、自分で体重をかけるタイミングなど工夫する余裕が生まれ、結果歩行が安定してきました。
歩行速度も無理しない程度の時速1.5kmでの歩行になりました。これでも歩幅は80cmを越えているそうです。
それじゃ~また。
認知運動リハビリテーション「患者さんに守ってもらいたいささやかな規則」(カルロ・ペルフェッティ教授)その3
脳のなかの身体―認知運動療法の挑戦 (講談社現代新書 1929)
- 作者: 宮本 省三
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/02/21
- メディア: 新書
認知運動リハビリテーション「患者さんに守ってもらいたいささやかな規則」その2
ロボットリハビリを終えて
ロボットリハビリを終えて
結局4週間、実質20日でリハビリは終了しました。タイムオーバーとのことでした。正直、せっかく調子が出てきたところなのに、もう2週間程度は続けたいと思いましたが、病院(リハビリ室)の都合があり、仕方ありません。病院側は回復期の患者優先で行きたいようなのです。回復が見込めない慢性期の人間は付け足しなのでしょう。
しかし私に関しては、新任のリハビリ医(若い先生でわたしは「はるか彼方」先生と早速あだ名を付けました)と、これまた初めての担当してくれたPTの先生も驚異的な改善だと驚いていました。
治療側には、私が多様な歩行をする事を事前に伝えていたにも関わらず、私の二点動作前歩きを見て、その後、今回のリハビリ入院で取り組んでいる三点動作前歩き歩行の改良型歩行(三点動作の歩行を二点動作で行う)を見て目を白黒させて驚いているのです。
「これほど短期間に歩容改善した例はない!」などと喜んでいるのですが、私にすれば、坂道歩行で使う三点動作歩行をベースに、これを平地で二点動作に変える改良に取り組んでいただけなのです。
しかし今回のロボットリハビリで貴重な気づきが多数えられたのも事実です。
歩行容姿は、モニターで前と横から、下面には足の位置(理想的な位置と現在の位置)が示されます。さらに体重移動が線で一歩一歩モニターで出てくるのです。歩いた後では、この録画をPTと一緒に眺めあれこれ検討するのです。
○麻痺足の足の残し方(逆に言えば麻痺足を前に出すタイミング)
○体重移動のタイミング(麻痺足を前に踏み出し着地させた後、どのタイミングで体重を乗せ始めるか)
○姿勢(前屈みや反り返り、麻痺側の肩やお尻が引けてしまう状態)の確認。
○PTからは、弱い筋肉や、使えていない筋肉等の指摘がありました。
歩行速度、歩幅に関しては、時速1.7kmの設定で歩幅が84cmになりました。
ロボットの最大の欠点
一番は分回しに対するものです。麻痺足の振り出しをアシストするロープが前方から引っ張る形で動作するのですが、これがまっすぐ前から引っ張るのではなく、外側斜め前から引っ張るのです。したがってこれでは麻痺足を斜め前に踏み出す動作になります。これでは分回しの改善につながらないのです。
PTが一度このロープをセットするのをわすれたことがありましたが、この方が分回しがおさえられていて二人で苦笑いしました。
なぜ、ロボットは、まっすぐ前に引っ張らないのか?ロープを固定できる位置が左右二カ所に限定されているのが原因ですが、分回し歩行は片マヒ障害者の特徴的な大きな欠点です。この歩行改善に対する対策がとられていないのはロボットの大きな欠点です。ただこれはPTがロボット操作に習熟していないだけかもしれませんが‥(注ー1)。
(注ー1)
後日、定期点検に来ていたメーカーの方に直接聞きました。ロープは、やはり左右どちらかにしか固定できないようです。「設計者に伝えておきます」とのことでした。たぶん私だけでなく多くの人がこの点に不満を感じているはずですから、この欠点は、改良される可能性は大いにあると思います。
ロボットリハビリの話は、まだまだ続きますが、長くなったので、一旦ここらで。
それじゃ~また。
認知運動リハビりテーション「患者さんに守ってもらいたいささやかな規則」(カルロ・ペルフェッティ教授)その1
患者同士の痛い会話 七年もたってその程度かい!
おたく7年もたってまだ杖ついて歩いているんですか!?
私がロボット入院しているときある男性と言葉を交わすようになりました。退院後、車の運転を始めたいということで、誰に聞き及んだのか車の運転をしている私に話を聞きたいと私のリハビリが終わるのを待って話しかけられてきました。
その方は回復期での入院らしいのですが、わりとスムーズに杖歩行されますし、何と麻痺側の指の曲げ延ばしが自由にできるのです。
それから時々話をするようになったのですが、「同じ市のよしみで‥」などと時々言われます。私はあまりこの言葉が好きではないのです。
それで程々に会話していたのですが、ある日もうこれ以上聞くべきものはないと判断されたのか、私の言葉のどこかでカチンとこられたかわかりませんが、突然口調を変えられ冒頭の言葉を投げかけてこられました。
「おたくは回復期でそう思われるのでしょうが、この病気は時間がたてば順調に回復する病気ではありません。とくに脳の損傷部分は生き返りません。それで動きを無くし、拘縮など悪くなられる方も多いのです」と説明しました。たしかに回復期で順調な方から見れば、「7年も何やっとたんや!」と思われるのでしょう。
しかしそれをストレートに言葉に出すか!?というのが直後の私の思いでした。私も回復期に病後7年と3年の慢性期の先輩と同室でしたが、お二人とも多少歩行が不自由には感じましたが、この病気の大変さや最新の治療方法など色々教えていただきました。何より真摯にリハビリに取り組まれる姿勢に接し、お二人と同室であったことが本当に幸運だったと今でも思っています。
それじゃーまた。